UXとAIの考察
更新日:2025年10月6日|公開日:2025年10月6日
ここ最近企画提案でUX(ペルソナとかカスタマージャーニーマップ)をAIを使って資料作成することがあったので思ったことを書いておきたいと思います。
この記事の内容
企画提案とUXリサーチについて
疑問を持った点がここなのですが、UXリサーチは本来、実際のユーザーの行動、ニーズを資料にするわけですから、AIで作った仮説に意味があるのか?という問いです。
ちなみに私の場合はWEBサイトのリニューアルの企画提案になるので全ての資料作成が1週間~4週間ということが多いです。またコンペなどの企画提案が多いのでこの業務には費用が発生しません。
実際に専門家がされているUXリサーチであればヒューリスティック分析なものでも人日8万円はかかると思います。10画面程のものなら8~10営業日といったところでしょうか。
企画提案の場合は一人でやる場合、UXリサーチの業務に時間がさけても0.5営業日かなと感じています。そうなってくると実際のユーザによるものは論外として、きっちりとした専門家によるUXリサーチを実施することも難しいかなと思っています。
「UXリサーチをやりますよ~こういう感じで、費用は●万円」という資料を作るだけのほうが嘘の張りぼて資料を作るより誠実だし良いかなと思ったりします。
だけどAIを使って「仮説だと断言し、それに基づいたUIのご提案です」というやり方も今の時代だと可能なので挑戦したいと思うようになりました。
AIで作るUX資料は意味があるのか?
私は元々そこまでUXリサーチャーとしての専門家というわけではないのですが、人間中心設計のユーザーテストの意味や効果などはわかっているつもりです。またAIが苦手な領域もある程度理解しています。
そんな中、色々検索していて以下の記事を読みとても勉強になりました。
AI時代、人のする『リサーチ』とは何でありうるか | RESEARCH Conference 2025 への出展
記事内ではAIには以下の3つの観点が欠けているということが記載されています。
- まなざし
- 身体性
- 創発
とくに「定量/定性」「能動/受動」「製品から見た世界/生活世界」の軸にわけたマッピングはかなりUXリサーチをする上でのAIと人間の役割分担をする上で役に立つと思いました。
基本的に私はヒューリスティック分析をするかぎりはAIであろうと人間であろうと、「まなざし」「身体性」「創発」は1人のものであってスナップショットでしかないと思っています。
それはUXリサーチの本質的な記事内でいう「生活世界に対しての能動的で定性的なリサーチ」ではないと感じます。
なので人間かAIという問題ではなく、AIで仮説として生成することは本質的なUXへの扉を開くための第一歩になり、無下に意味がないと切り捨てることはないと考えました。
AIと人間の応答のプロセスの違い
またAIに欠けている3つの観点を考えたときの人間との思考プロセスの違いなども考えてみました。
大阪・関西万博に行くんだけどおすすめを教えて
このプロンプトをAIに渡すと、
おそらくその時点でLLMに蓄積されている世間的な人気パビリオンのランキング的なものと、最後にどういう趣向を持ってますか?という質問がくるのかなと推測します。
だけどこれを人間に聞いた場合は、
- 相手と自分との関係性
- その時の時期や時間の考慮
- 相手のフィジカル要素(健康状態)や趣向
- 実際行った自分の経験
上記のフィルタを頭の中で数秒くぐってから回答を出す。記事に例えると3つの「まなざし」「身体性」「創発」をくぐると思います。
これを「毎回プロンプトで設定したらいい」というのはどう考えてもナンセンスだと思います。
「生活世界に対しての能動的で定性的なリサーチ」とは
ただ人間でもTV番組みたいな人気商品やメニューを当てる問いなら脳内知識のランキング思考になるだろうし、ユーザーアンケートであれば「良かったな」と思ったものを無意識で脳内で3つの観点をくぐらせてアンケートに記載するのではないだろうか。
ここで気づいたのですがこういった人間によるアンケート調査はAIには真似することがしにくいリサーチデータであると。
最近はそういった「生活世界に対しての能動的で定性的なリサーチ」のデータが新たなビジネスを作るケースが多くなっていると言います。
AIのデータも「生活世界に対しての能動的で定性的なリサーチ」によって変化する
そしてまた時間が経ってからAIに聞きます、
大阪・関西万博に行くんだけどおすすめを教えて
その結果は「生活世界に対しての能動的で定性的なリサーチ」のデータ、たとえばSNSの口コミなのか、はたまたUXリサーチの結果による施策なのか、その内容に上書きされているのではないかと。